たぶん忘れられない日になる

デンマークに引っ越して、この夏で5年になります。
「デンマーク=夢の国」と、デンマークのすべてがキラキラして見えたのもいまは昔、
北欧礼賛と言わんばかりにキラキラがあふれたデンマーク紹介を見て
「へんっ!」と思うことも多々。
住めば都とは言いますが、住んでいるからこそ見えてくるものってたくさんあります。
うれしい日も悲しい日もある。
デンマークでの毎日がすばらしいと思うときも、最低だと思うときも。

この5年弱を振り返って、あまりのつらさでいまだに忘れられない日があります。
ひとつは義理のお姉さんのバチェラーパーティー。
デンマークに来てすぐのことで、言葉もままならないまま
主役のお義姉さんしか知らないところにポンと放り込まれました。
もちろん言葉の壁にぶつかり、何が起こっているかもわからないのに
みんなと同じように笑って、楽しいふりをしたあの日は
いまでも思い出すと、なんともいえない気持ちになります。
もうひとつは、デンマーク語の語学学校に通っていたときのこと。
その日はおなかが痛くて、授業で書いた作文にも間違いが多くありました。
それを見た先生が
「いつもの作文と出来が違うけど、いつも宿題は家で手伝ってもらってるの?」と
聞いてきたときのショックといったら。
エス氏に手伝ってもらわずに、自力で勉強することをポリシーにしていた私は、
とっても悲しい気持ちになり、「ボイコット」と称して
そのあと何日か学校をさぼりました。
いま思えば大人げないリアクションだったと思いますが、
あのひとことはいまでも忘れられません。

そして、このふたつのエピソードとともに「忘れられない日の記録」に
新たに書き加えられるであろうことが、先週の土曜日に起こりました。

教習所に通いはじめて2週間。
2回の学科教習を終え、先週の土曜日に初めての技能教習がありました。
身近でマニュアルの車を運転していた人と言えば、
20年以上前に亡くなったおじいちゃんくらい。
マニュアル運転を近くで見たことがないし、車に乗っても後部座席専門だった私。
運転席に座る自分も大して想像できないまま当日を迎えたのですが、
想像を上回るほどのひどいスタートで、車を見るのも嫌になってしまいました。
技能教習は生徒3人に先生ひとりがついて、
車でちょっと行ったところにある教習所の施設でありました。
先生が助手席に座って、生徒が1人ずつ順番に教わるのかと思っていたら、
どうやって車をスタートさせるかの説明に続いて
8の字走行など、どんな練習をするか、実際に運転して見せてくれただけで、
あとはそれぞれ車に乗って個別に練習しなさいという感じでした。
基本的なハンドル操作の説明もなく、いきなり一人で運転席に座らされて、
ドキドキしながらエンジンをかけました。
車を動かすことには何とか成功したものの、
うまく自分の練習領域に曲がって入って行くことができず、ずるずると直進、
となりの練習領域を超えて周りにある芝生にまで入ったところで止まりました。
(こう書くと大ごとですが、全部の距離にして15メートルくらいです)
私にしてみれば、ハンドルの操作も教わってないのに、
いきなりひとりで運転してみろなんていやいやいや・・・無理です。
でも、私のところにやってきた先生は、「芝生にまで乗り上げて何やってんだ!」。
初めて運転席に座るという状況に気持ちが影響されたことを伝えると
「だったら車なんて運転しないほうがいい」なんて言うので、
ショックで(恥ずかしながら)涙が出てきました。
ほかの2人はできてるのに何でできないんだとか、
わからないなりにやる私の運転を車外から見て、うまくできてないと両手をあげて
「ちがーーう!」と大声で怒るんです。
運転席に座って、どうしたらいいのかわからず、エンストを繰り返す自分に
本当に情けない気持ちになりました。
ぼっちゃんをいろんなところに連れていってあげるなんて夢のまた夢。
私には車の運転をする素質も資格もないんだと、
「だったら車なんて運転しないほうがいい」という先生の言葉だけが
頭のなかを行ったり来たりしていました。

そのあとなんとか気持ちを取り戻して、できないなりにいろいろ練習しましたが、
助手席に先生が座ることもなく、はじめての技能教習は終了しました。
うちに帰ってからしばらくは、ショックと悲しい気持ちと、
先生に対する恐怖みたいな気持ちで、胸がいっぱいになり、
道を行く車を見ては、みんなにできることが私にはできないんだなと思いました。

もともと思いつめやすく、結論を急いでしまう性格なので、
とにかくこの負のループから脱するべく
周りの人にこのできごとを話してみることにしました。

同じくデンマークに住む日本人のお友達にメールをすると
デンマークで免許を取った人のブログを教えてくれました。
それを読む限りでは、いきなり車に一人で乗る技能教習は
珍しいことではなさそうだということがわかりました。
エス氏の同僚やお義母さんの
「教習所の先生は緊張する生徒を落ち着かせるのも仕事のひとつ」という言葉を聞いて
土曜日の先生はその対極を行くものだったと改めて思います。
ほかにもいろいろな人に話して、だんだん土曜日のできごとは
「先生がひどかったのだ」「ひどい先生にあたってアンラッキーだった」
と思えるようになってきました。

次回の技能教習ではすでに公道を使った走行練習が始まります。
まだまだまともに発車できる自信もないですが、
イメージトレーニングをして、この最悪のスタートの悲しみを払拭できるように
気持ちを切り替えていきたいです。
幸いにも、今度の技能教習からはマンツーマン。
しかも別の先生がついてくれることになっているので、
いろいろいい方向に行くといいなと思っています。